離婚調停は弁護士に依頼すべき?弁護士費用とメリット・デメリットを解説
離婚をしたいと思ったとき、まずは夫婦で話し合いを行いますが、二人の話し合いだけでは折り合いがつかない場合があります。
そうなると次に進むのは「離婚調停」です。
離婚調停と聞くと一気に法律の雰囲気が漂い、難しいイメージを持たれる人が多いのではないでしょうか。
この記事では、
- 離婚調停の進め方
- 調停離婚をする時に弁護士に依頼するメリット・デメリット
- 弁護士費用をなるべく抑える方法
をご説明します。
この記事は、離婚調停に進むべきか悩んでいる人にとって、離婚調停の流れを事前に理解し、より有利に離婚できるためのヒントになるでしょう。
- 離婚の種類
- 離婚調停の進め方
- 離婚調停を申し立てる時にかかる費用
- 調停離婚をする時に弁護士に依頼するメリット
- 調停離婚をする時に弁護士に依頼するデメリット
- 離婚調停にかかる弁護士費用の相場
- 弁護士費用を抑えたいなら「法テラス」
- 弁護士に依頼して調停離婚を成立させた実体験
- まとめ
離婚の種類
離婚は「どのように離婚が成立したのか」その過程によって4つに分けられます。
協議離婚
協議離婚とは、夫婦が話し合いによって合意し離婚するものです。
双方が離婚の条件に合意すれば、離婚届を役所に提出し、受理されれば離婚が成立します。
離婚で一番多いのは協議離婚です。
2018年の厚生労働省の統計によると、約87.4%が協議離婚という結果でした。
協議離婚は弁護士に依頼せずとも離婚が成立するのがほとんどです。
参照:厚生労働省
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2020.asp?fname=T06-02.htm
しかし、離婚後に後悔しないように、離婚条件をしっかりと話し合っておくのが大切です。
話し合いによって合意した内容の「離婚協議書」を作成し、合意内容を明らかにしておくといいでしょう。
離婚後に、養育費や慰謝料などが支払われない場合もあるため、離婚協議書は「公正証書」で作成するのがポイントです。
調停離婚
調停離婚とは、家庭裁判所にて離婚調停を行い、調停成立後に離婚するものです。
離婚調停とは、調停委員を交えて離婚の話し合いをするものです。
夫婦での話し合いがまとまらない、または相手が話し合いに応じないなどの場合には、離婚調停に移ることになります。
調停委員があいだに入り、夫婦双方の話を聞いて、養育費や財産分与などの離婚条件を調整していきます。
調停委員は通常男女ひとりずつが選定され、夫婦別々の個室にて話を聞いてくれます。
お互いに顔を合わせずに、自分の言い分や気持ちを話せるため、夫婦だけで話し合うよりも冷静になることに期待できます。
調停離婚は離婚全体の8~9%程度です。
日本では離婚訴訟を起こす前に、必ず離婚調停で話し合いを行わなければならない決まりがあり、これを「調停前置主義」といいます。
審判離婚
審判離婚とは、離婚調停が成立する見込みはないけれど、審判によって離婚するのが相当と判断できる場合に、家庭裁判所が離婚を認めるものです。
この「離婚調停が成立する見込みがない」理由は、夫婦どちらかが入院をしていたり、受刑中であったりと、家庭裁判所に出頭できない場合などです。
全国でも年間100件程度と非常にレアなケースで、離婚全体の0.1%未満です。
裁判離婚
裁判離婚とは、家庭裁判所にて行われる離婚訴訟を経て離婚が成立するものです。
離婚調停が不成立に終わっても、離婚の意思が変わらない場合は、離婚訴訟へ移ります。
離婚訴訟が認められるためには、原告が離婚の原因があることを主張・立証しなければいけません。
審理を行い離婚原因があると認められれば、離婚を認める判決が確定し、離婚が成立します。
裁判離婚は離婚全体のおおよそ1%です。
離婚調停の進め方
4つの離婚のうち、この記事では「離婚調停」にスポットを当てて解説したいと思います。
まずは、離婚調停の進め方をご説明します。
家庭裁判所への申し立て
離婚調停は原則、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
当事者同士が合意すれば、別の場所にある家庭裁判所に申し立てることも可能です。
また、離婚調停が成立するまでには、約半年~1年と時間がかかるケースが多いです。
離婚調停中も相手方に生活費を払ってもらいたい場合には、「婚姻費用分担請求調停」も同時に申し立てましょう。
同時に申し立てた場合、婚姻費用を先に決めてもらえるので、離婚調停中の生活費を確保することが可能です。
離婚調停申し立て後の流れ
離婚調停を申し立てると、家庭裁判所より調停期日が指定され、家庭裁判所に出頭します。
遠方に住んでいる相手方に調停を申し立てた場合、申立人にとっては家庭裁判所が遠く、出頭するのが難しい場合があります。
このような時は、電話会議による調停が進められることもあります。
調停開始から終了まで
離婚調停は通常1回で終了することはほとんどありません。
第1回期日後、月に1回程度のペースで調停期日が指定され、話し合いを続けます。
一般的に多いのは、調停回数は5~6回、調停期間は6ヶ月~1年程度で調停が成立するケースです。
調停が成立すると家庭裁判所にて「調停調書」が作成されます。
この調停調書と一緒に、離婚届を役所に提出することで、離婚が成立します。
調停成立日が離婚日です。
離婚調停を申し立てる時にかかる費用
離婚調停を申し立てる時にかかる費用は下記の通りです。
- 申立手数料 1,200円
- 郵便切手代 1,000円程度
婚姻費用分担請求調停も同時に申し立てる場合は、別途1,200円が必要です。
郵便切手代は、家庭裁判所からの期日連絡用に使用されるものです。
このほかに、離婚調停の申し立てには戸籍謄本が必要になります。
戸籍謄本を取得する際に、役所で納める手数料は450円です。
離婚調停の話し合いの中で「年金分割」も求める場合には、別途戸籍謄本が1通必要なので、合計2通(900円)用意しておくとスムーズです。
調停離婚をする時に弁護士に依頼するメリット
離婚調停は弁護士に依頼せずとも、当事者同士で調停成立を目指すことは可能です。
しかし、弁護士に依頼した方がよりスムーズに、よりこちらの希望に沿った形で離婚を成立させることが可能といえます。
ここでは、離婚調停をする時に弁護士に依頼するメリットを解説します。
手続きに必要な書類や資料を作成してくれる
弁護士に依頼をして離婚調停を申し立てる場合は、調停に必要な書類や資料を弁護士が用意してくれます。
調停を行う際に書類や資料が不十分だと、調停を長引かせる原因になります。
法律のプロが漏れなく用意してくれることで、一日も早く調停を成立させられる可能性が高くなります。
相手方の財産を調べられる
残念ながら、相手方が慰謝料や養育費を払いたくないがために、財産を隠しているケースがあります。
こういった時弁護士は、弁護士法に基づく照会制度を利用し、金融機関に口座の残高照会をすることができるのです。
相手方の財産については、裁判所の調査嘱託制度を利用する方法もあり、弁護士に依頼をしていれば手続きを行ってくれます。
こうした方法を利用し、相手方の財産を正確に知ることで、正当な財産分与が望めます。
希望に近い養育費や慰謝料を受け取れる可能性が高くなる
養育費を決める時に基準になるのが、裁判所が用意している「養育費算定表」です。
通常は養育費算定表を用いて、妥当な金額を決めていきます。
しかし、裁判所の養育費算定表の金額は、残念ながら実際に養育するにあたっては不十分な金額なのです。
一方、日本弁護士連合会は、裁判所の養育費算定表よりも金額が約1.5倍上がる「新算定表」を発表しています。
弁護士はこの新算定表を参考に、相手方へ養育費の交渉を行ってくれます。
また、同じ収入、同じ子どもの人数でも、各家庭の事情によって生活に必要な金額は異なるでしょう。
こういった養育費算定表上だけでは計れない、各家庭の事情を踏まえた上で、弁護士は養育費の交渉を行います。
この点でも弁護士に依頼する方が、より希望に近い養育費や慰謝料を受け取れる可能性が高くなるのです。
精神的な面でも支えになる
離婚調停中、当事者は心身ともに大きなストレスを抱えた状態であるのが予想されます。
そういった状況で、調停に必要な書類や資料、やらなければならない手続きをすべて一人で行うのは大変な労力です。
離婚調停を弁護士に依頼すれば、手続きを代行してくれたり、調停で相手方へ交渉してくれたりと、精神的な面で助けられる場面はとても多いです。
一緒に離婚調停を乗り越える、心強い味方ができるのも大きなメリットといえます。
調停離婚をする時に弁護士に依頼するデメリット
では次に、離婚調停を申し立てる時に弁護士に依頼するデメリットをみていきましょう。
弁護士費用がかかる
弁護士を依頼するときには、弁護士費用がかかります。
その金額は、安い金額とは到底言えません。
弁護士を依頼せずに離婚調停を申し立てる時と比べると、経済的なデメリットがあります。
(弁護士費用の相場については、この次の章で解説します。)
調停の日程を弁護士のスケジュールに合わせる必要がある
弁護士は通常、何件もの事件を同時にかかえています。
離婚調停のスケジュールは、通常月に1回程度ですが、裁判所や相手方の都合に加えて、弁護士が出頭できる日程を組む必要があります。
弁護士の都合が合わず、月1回のペースよりも日が開いてしまうこともあるのです。
少しでも早く離婚したい人にとっては、この点もデメリットのひとつといえるでしょう。
離婚事件の経験が少ない弁護士もいる
法律の専門家である弁護士でも、得意とする事件は人それぞれです。
離婚事件の経験が少ない弁護士も存在します。
弁護士を選ぶ時は、どのような事件を多く扱っているのかをよく確認した上で依頼をしないと、離婚調停をスムーズに行えない可能性もありますので注意しましょう。
離婚調停にかかる弁護士費用の相場
では実際に弁護士に離婚調停を依頼すると、弁護士費用はどの程度かかるのでしょうか。
必要な費用の種類と相場を解説します。
相談料
まず必要になるのが、「相談料」です。
離婚調停を申し立てようと決めた時、「今の自分の状況は弁護士に依頼した方がいい?」「弁護士に依頼するとしたら費用はいくらかかる?」と考えるでしょう。
まずは、このような疑問を解決するために、弁護士事務所へ相談をします。
この時の相談料として、30分5,000円前後が相場です。
1時間相談した場合は1万円という具合に、通常時間ごとに金額が増していきます。
弁護士事務所によっては、初回の相談料を無料にしている事務所も多いです。
また、自治体の無料法律相談でも、離婚について弁護士に相談できる制度があります。
少しでも離婚調停費用を抑えたい人は、こういった制度を利用してみましょう。
着手金
弁護士への依頼を決めたら、「着手金」が必要になります。
離婚調停の着手金の相場は、20万円~30万円程度です。
弁護士費用は通常一括で納めますが、分割の相談に応じてくれる弁護士事務所もあります。
分割を希望する場合には、依頼する前に必ず確認しましょう。
報酬金
弁護士費用には「報酬金」といって、事件が解決した報酬として支払う費用があります。
離婚事件の場合、離婚が成立した成功報酬として支払います。
離婚調停の報酬金の相場は、おおよそ20万円~30万円です。
これに加えて、養育費や慰謝料を受け取ることが決まった場合には、その金額の10%~15%の報酬金が加算されます。
パーセンテージは弁護士事務所によって異なります。
実費・日当
相談料・着手金・報酬金以外でかかる費用には、「実費」と「日当」があります。
「実費」とは、『離婚調停を申し立てる時にかかる費用』でご説明した、申立手数料や郵便切手代などです。
ほかには、調停を行う家庭裁判所に出頭するための弁護士の交通費などが実費にあたります。
「日当」は、弁護士が事件を処理するために、事務所から移動することで時間を取られる場合に支払うものです。
離婚調停を弁護士に依頼するときの日当は、家庭裁判所へ出頭するときなどにかかります。
日当は半日なのか、丸1日なのかで金額は違いますが、相場としては、おおよそ1日5万円前後です。
弁護士費用を抑えたいなら「法テラス」
「弁護士に依頼したくても、高額な弁護士費用は払えない・・・」
このように経済的な理由から、弁護士への依頼を躊躇される人も少なくないでしょう。
ここでは、費用を最小限に抑えながら弁護士へ依頼する手段のひとつとして、法テラスをご紹介します。
法テラスとは
法テラスとは、経済的な理由で弁護士などの法律の専門家に相談できない人のために、法律的な支援をする「日本司法支援センター」です。
法テラスは、法務省管轄の公的な機関で、離婚・相続・借金など、刑事・民事問わず、国民が法律の相談ができるトラブル解決のための場所です。
法テラスを利用するメリット
法テラスは、民事法律扶助業務を行っています。
民事法律扶助業務とは、経済的に余裕のない人が無料で法律に関する相談ができたり、弁護士費用の立て替えをしてくれたりする業務のことです。
立て替えてもらった弁護士費用の返済は、分割にすることが可能です。
また、弁護士費用自体も通常の弁護士事務所の相場よりもはるかに安くなります。
無料で法律相談ができる
法テラスには、経済的に余裕のない人が、弁護士に面談や電話で無料相談ができる制度があります。
無料相談は1回30分程度、回数はひとつの問題につき3回までです。
収入が一定額以下であることや、民事法律扶助の趣旨に適することが条件です。
費用を立て替えてもらえる
調停などを弁護士に依頼するときにかかる費用を立て替えてもらえる制度があります。
法テラスが利用者に代わって弁護士に費用を支払い、利用者は法テラスに分割で費用を返済します。
分割にしても利息はつかないので、安心して数年にわたって返済することができます。
弁護士費用が安くなる
法テラスの民事法律扶助を利用すると、弁護士費用自体もかなり安くなります。
離婚調停の場合、着手金の弁護士事務所相場が20~30万円に対して、法テラスは約110,000円です。
このほか実費や報酬金も、弁護士事務所の相場より法テラスの方がかなり安くなります。
利用するには基準を満たす必要がある
法テラスを利用ためにはいくつかの基準がありますが、離婚調停の申立てで気をつけなければいけないのは「資力が一定額以下であること」です。
資力は、1.月収が一定額以下、2.保有資産が一定額以下のふたつを満たす必要があります。
具体的な例を下記に挙げてみます。
- 単身者・・・月収182,000円以下(200,200円以下) 資産180万円以下
- 2人家族・・・月収251,000円以下(276,100円以下) 資産250万円以下
- 3人家族・・・月収272,000円以下(299,200以下) 資産270万円以下
※()内は東京や大阪の大都市の基準です。
引用:法テラスhttps://www.houterasu.or.jp/houterasu_gaiyou/mokuteki_gyoumu/minjihouritsufujo/index.html
弁護士に依頼して調停離婚を成立させた実体験
筆者は弁護士に依頼をして離婚調停を申し立て、離婚を成立させた経験があります。
筆者の場合は、親権の争いで協議離婚ができずに調停へと移行しました。
当時、子どもたちは7歳と5歳でした。
もちろん調停を申し立てることも初めてで、さらに親権をいうとてもデリケートな問題を争う必要があり、私は迷うことなく弁護士へ依頼をしました。
経済的な余裕はなかったので、法テラスを利用しました。
実際に私が支払った弁護士費用は以下の通りです。
- 相談料 無料
- 着手金 172,800円(婚姻費用分担請求含む)
- 報酬金 63,200円(婚姻費用分担請求含む)
- 実費 約100,000円
筆者はこれらの費用を分割で納めました。
筆者の場合、相手方が遠方だったため実費が多くかかりましたが、日当の支払いはありません。
法テラスを利用したことで、弁護士事務所へ直接依頼をするよりもかなり費用を抑えることができました。
支払いは長期に渡りましたが、筆者は弁護士へ依頼をして本当によかったと思っています。
今振り返っても、当時幼い子どもたちの育児をしながら、調停に必要な書類を揃えたり、家庭裁判所と日程を調整したりすることは難しかったように感じます。
また、「万が一親権を取られたら・・・」という恐怖と常に戦っていたので、離婚事件の実績豊富な弁護士に依頼したことで、精神的な助けにもなりました。
もちろん離婚調停では、弁護士がリードしてこちらの言い分や希望を論理的に述べてくれたり、養育費の交渉もしてくれたりしました。
経済的な負担はありましたが、筆者にとっては弁護士に依頼するメリットの方がはるかに大きかったです。
まとめ
離婚調停に難しいイメージを持たれる人もいると思いますが、協議離婚が成立しない夫婦にとって、離婚するためには避けては通れません。
離婚調停は、調停委員の力を借りて、夫婦にとって最善の離婚をするためのものです。
自分一人で離婚調停を申し立てるのに不安がある場合は、ぜひ一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
無料で弁護士に相談ができたり、弁護士費用の立て替えてくれたりする「法テラス」という相談窓口もあります。
一人で抱え込まずに、ぜひ法律の専門家に相談してみてください。